軌跡

走り続けた一本の線が、衛星軌道を経てまた元に帰るように。時間はスプレー状に拡がって渦巻き、微視の果てに円に至る。そういう風に捉えられた世界の、救い難い正しさを額に入れて飾って、私たちは触れ合った。部屋は広く、どこかそっけなく、吐息が絡む度に冷たさを増して行く。息をする肉体が放つ時間は球になって、等しく立ち昇って、また内に帰ろうとする。そうあらなければならないことと、そうあらしめなければいけないことと、ほんとうはそうであることが、そのどれも、切り取り方の問題でしかないならば、約束だけを理由にして、何も変えずにいたかった。泡になった時間ばかりが無数に、見える限りにおいては無数に、繰り返し繰り返し押し寄せて手のひらを撫でていった。