一室

灰の上にたむろした光の

苦しみを立たしめた香りが

今吹き上がって風に散ってゆく

 

窓から漏れ入る夕景は わずかに

実にわずかに 思い出に席を譲る

 

置きかわってゆく 日々

すれちがってゆく 夜々の

切先が頬に傷を付ける

何故僕は血を流し

何故君はそこにいないのか

けんけんぱ けん から 今も

降りられないで

 

不規則な秒針を気にかけなければ

こんな静けさに気づけなかった

それでも くすんだ灰の

甘い 匂いが

こうして僕に見上げさせる

 

ああ 離れられない

 

知らなかった癒し 清めた部屋の

奥行きの向こうに積み上がった時よ

ほんの一瞬だけでいい

お前の鱗を人差し指で逆撫でして

煌めく気配で俺を満たしてくれ