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空を見ながら歩いていたら、急に壁にぶつかった。仕方のないことだとは思ったが、唐突なので信じがたい。なぜここに壁がなければいけないのか。関心があるわけでもないのだが、文句を言わなければ気が済まないということもある。

君はなんだってこんなところにあるんだ、と話しかけた壁は緩やかに蠕動して、これまた唐突にテクスチャを獲得していた。瑞々しい、皮を剥いた桃。見た目に反して湿り気がないのが奇妙で落ち着かない。

迂回すればいいだけの話で、せいぜいが畳一枚分程度の桃の壁は回り込んでみてもやはり桃の壁だった。気に入らないのは、これが単に壁だということだ。私はこれを置き去りにできる。そのくせ主張の強さがある。手触りは硬く滑らかで、先ほどの蠢きなどおくびにも出さない。まるで私は壁なのだ、とわざわざ口にしてから黙り込み、おやすみなさい。